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飛翔館高校教員解雇事件 
    弁護団声明 2009年12月23日
        弁護団一同

1 飛翔館高校整理解雇事件について、平成211218日、大阪地方裁判所堺支部第1民事部は、原告5名中4名の整理解雇を容認する不当判決を下した。
  本判決は、整理解雇の4要件(@人員削減の必要性、A解雇回避努力義務の遂行、B解雇対象者の選定の合理性、C解雇手続きにおける協議義務の具備)を否定しないまでも、必要性の判断をもっぱら理事会の裁量に任せ、とりわけ、労働組合・当事者との協議義務を、全く軽視する点において、到底、許し難い。
  教員の整理解雇による安易な教員数の削減は、教育の質の低下を来たし、しわよせを生徒に押しつけるおそれがあることから、一般的な私企業における整理解雇の場合よりも、厳格な判断基準によるべきだとする判例(三田尻女子高校事件・山口地裁平成12228日決定・労働判例80779頁)に対して、本判決は、そのような考え方は「学校設置者における業務上の必要性を軽視することとなり,ひいては,学校経営の破綻を招き,生徒が教育を受ける機会を奪うこととなりかねない」等として、採用できないという。
しかしながら、本件判決こそ、突然、一度に18名の教員が教壇を去る(雇い止めや早期退職の11名を含む)という非常事態に直面した生徒らの教育を受ける権利について、一顧だにしないものである。

2 本件の争点は多岐にわたるが、最大の問題点は、上記4要件のうちCの「使用者は労働組合または労働者に対し、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき、納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき義務を尽くしたこと」が全くなされていないことにある。
学園が整理解雇を教職員らに初めて明らかにしたのは、平成20226日に「第2次早期退職希望者募集要綱」を法人掲示板に掲示したときであり、同要綱には、解雇の時期、人数、対象者の人選基準等ついて触れる点がなかった。そればかりか、学園はその後、解雇の時期、人数、方法は一切答えず、被解雇者(7名、うち原告5名)は、平成20329日及び同月30日の郵便で、突然の解雇を知ることになった。
この点、本判決は、「被告は,本件組合及び労働者に対し,本件整理解雇の人数及び方法等について説明していないなど,事前の協議が十二分になされていたか、問題がある」としつつも、「被告が,本件組合及び労働者に対し,本件整理解雇の時期,規模及び人選基準を説明しても,協議の進展の見込みは非常に疑問であり,被告において,仮に,本件整理解雇以前に解雇対象者が特定された場合,当該解雇対象者の動揺を含め,年度末までの教育指導に多大な支障を来す可能性があると考えて,」説明しなくても「これを全く不合理とも断定し難い」としている。
しかしながら、上記Cの協議義務について、「(説明・協議をやらないことが)全く不合理とも断定し難い」等という理由で免除されるとは、聞いたことが無い。そもそも、協議もしていないのに、「協議の進展の見込みがなかった」等とどうして言えるのであろう。使用者が協議の進展に見込みがないと考えれば、使用者の協議義務が免除されるというのであれば、C要件はないに等しいこととなる。秘密裏に突然解雇すれば、教員の生活は破壊され、生徒らは一層混乱するのは自明である。

3 本判決の立場は、まさに「生徒不在」の判決である。
  本件審理の中で明らかになったが、学園は7名の教員を整理解雇しながら、他方で、早期退職に応じた専任教員1名を常勤講師として採用し、また、新卒教員の募集さえしていた。さらに本件解雇後、学園は、生徒数が大幅に減少したのに、平成214月には専任教員を7名増員したのであった。しかし、増員が必要なら、原告らこそ学園に戻すべきであった。この点に関し、本判決は、色々と学園の立場で陳弁するが、それこそ本件解雇がいかに杜撰なものであったかについて、言及する点がない。
  そこで、本判決が指摘するのは、7名の専任教員新規採用は、前年度の非常勤講師の人材難に対する新たな対処策であって、本件整理解雇時に予想できた事柄とはいえないから、整理解雇の必要性を否定することはできないというのである。これでは、まず専任教員の首を切り、足りない部分は非常勤講師を雇用し、非常勤講師ではよき人材が得られない場合は、また、専任教員の募集・採用をすればよいというのである。
  さらに、非常勤講師に適切な人材が得られないことがありうるが、それは「本件整理解雇時に予想された事柄とはいえない」として、何よりも、生徒と教育を守るべき学園の責任を不問にしている。将に、前記三田尻女子高校事件決定が危惧する事態が現実化しているのに、本判決は、その点の配慮など何もないのである。

4 このように、本件判決こそ、教員の生活と生徒の教育を受ける権利への配慮を感じさせない判決である。このような判決は、学園の経営再建にとっても大きな障害となるであろう。学校とは、単に建物ではなく、生徒と教師が共に作り上げていくものである。生徒の学ぶ権利や教師の生活保障を含む教育権を軽視する学校には、その未来は無いであろう。そして、信頼関係の基本は、学校が説明義務・協議義務を果たすことによってこそ生まれるものである。協議もせず、勝手に決め付け、押しつけるところに信頼関係も教育も成り立たないことを知るべきである。その意味で、本件は、学校を守り、教育を守るたたかいである。
私達弁護団は、本件不当判決に強く抗議・排撃するとともに、今後とも原告・支援者の方々と力をあわせ、控訴審では、必ず、全員の職場復帰を勝ち取るべく、全力を尽くす所存である。改めて、多くの方のご支援を、心から訴えるものである。

京橋共同法律事務所

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