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原爆症認定集団訴訟  
   大阪高裁でも「全員勝ったで!」
        弁護士 愛須 勝也

1 再び「全員勝ったで!」
 2008年5月30日、大阪高裁14民事部(井垣敏生裁判長)は,原爆症認定集団訴訟について,国側の控訴を全て棄却し,原告全員の原爆症認定申請却下処分を取り消した原判決を維持する判決を言い渡しました。 国側は、これに対して上告を断念し、原告らの勝訴判決が確定しました。
 全国各地で取り組まれている原爆症認定の集団訴訟の先頭を切って、原告全員勝訴の判決(大阪地裁第 2民事部・西川知一郎裁判長)を受けたのが、2年前の5月12日。再び、「全員勝ったで」と喜ぶことができまし  た。しかし、二年前、全員で喜びあった原告のうち、既に3人の方が亡くなっています。ところで、大阪高裁判決、その直前に出された仙台高裁判決で、国は上告を断念したにもかかわらず、全国の集団訴訟で国は依然と  して争い続けています。未だ、多くの原告が原爆症と認められず、大阪地裁での裁判もまだ終結していません(二次訴訟が7月18日に判決が言い渡される予定ですが、三次訴訟はまだ審理が始まっていません)。被爆者は、皆、高齢であり、特に原爆症の認定申請をしている方々は原爆放射線の後障害に長い間苦しみ、発症している人たちです。戦後63年経っても、被爆者のたたかいは終わっていない、解決していないということをぜひ知って下さい。

2 原爆症とは
 ここでもう一度、原爆症についてのおさらいをしておきます。
 1945年8月6日と9日、広島・長崎に投下された原子爆弾は、一瞬にして多くの人々の命を奪い去りました。アメリカ軍は、「死ぬべき者はすべて死んだ」と言って原爆放射線による後障害を隠蔽しようとしましたが、地獄の淵から生き残った人々も、放射線の影響により急性症状を発症し、その後、長らく放射線後障害に苦しめられることになります。ところで、原爆放射線の影響は現在でも、まだまだ未解明な部分が多く、その影響のメカニズムは解明し尽くされていませんが、被爆者のDNA等に異常をもたらし、がんや白血病など様々な病気にかかりやすくなり、「原爆ぶらぶら病」と言われる原因不明の強度の倦怠感に悩まされ、苦しみ続けてきました。
 このような原爆放射線被害の特性から、原爆症認定制度が設けられ、被爆者の病気が原爆放射線の影響であると認められる場合には、厚生労働大臣が「原爆症」と認定し、医療費や手当が支給されるのが、「原爆症認定制度」です。

3 集団訴訟の経緯
 ところが、被爆者が原爆症の認定申請をしても、認定基準は厳しく、なかなか認定されませんでした。そこで、長崎の被爆者である松谷英子さんや京都の小西健男さん、東京の東数男さんらが、却下処分の取消しを求める個別の裁判を起こし、勝訴を重ねてきました。松谷さんの裁判は最高裁でも勝訴し、認定基準の拡大が期待されました。ところが、国は、「原因確率論」と呼ばれる、より厳しい認定基準を作ったのです。この新しい審査基準では、全被爆者の0.8%しか認定されない代物でした。
 個別の裁判でいくら勝っても国の姿勢は変わらないのならば、被爆者が大量に認定申請を起こし、却下されたら集団で訴訟して、一致団結してたたかい国の被爆者行政を変えていこうということで全国各地で始まったのが原爆症認定集団訴訟です。

4 勝利判決の連弾と国の姿勢
 その後、先の大阪地裁判決を始めとして、広島、名古屋、仙台、東京、熊本と勝利判決が相次ぎました。
 さすがに国も広汎な国民世論に絶えきれなくなり、昨年八月に、当時の安倍首相が認定基準の見直しを指示しました。これに対し、厚生労働省は、認定基準の小幅な「手直し」にとどめようと画策し、与党を含めてすべての政党から強い非難が出されて、被爆者も厚労省前での座り込みなど、抜本的な見直しを求めて運動をしてきました。
  ところが、厚労省は、被爆者らの強い反対を押し切って、本年4月から、「新しい審査の基準」を強行したのです。新基準により従来に比べれば認定者数が増えますが、未だ原爆被害の実態に沿った認定基準とはいえず、とりわけ、被爆者の多くが苦しんでいる肝機能障害や甲状腺機能低下症を患っても積極的に救済されない状態が続きます。  この認定基準強行に際して、舛添厚労大臣は、その直後に予定されている大阪、仙台高裁の判決に注目して、見直しを行うと言明していたことから、全国の被爆者らは、両高裁判決によって、新方針が再度、見直されるものと期待しました。
 ところが、国は、両判決は個別原告に対するものであり、判断の対象となった原告の疾病が限定されることから、他の高裁の判断も仰ぐ必要があるとして、認定基準を改めないどころか、延々と訴訟を継続しようという立場を明らかにしたのです。

5 被爆者救済の全面解決の夏に
 国の態度に原告・被爆者らは大いに失望し、怒りを新にしています。
 国は、裁判の中で、放射線後障害に苦しんできた原告らの人生を踏みにじるように、「原告はほとんど被爆していない」「審査の方針は科学的で何も間違っていない」と言い続け、何度、裁判に負けても争い続けています。
 被爆者は、皆、高齢です。国の態度は、解決を引き延ばして、被爆者が死に絶えるのを待とうとするもので、決して許されるものではありません。
 63年目のこの夏が、この問題可決の大きな山場です。
 今後とも皆さんのご支援、ご協力をよろしくお願いします。
 




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